不思議な味がする詩である。「すてむvol.48」十六頁から(2010年11月25日刊)。まず第一連、第二連で都市の特異な暗喩が出てくる。
第一連の都市の暗喩。それは軟白されたアスパラガス。第二連の都市の暗喩。それは切り倒された公衆トイレわきのシイノキの白く光る切り口。いつのまにか肥大していくその小さな痛み。
おそらくアスパラガスを軟白するイメージと都市のイメージが結び付いた時、この詩が発光したのであろう。ついでに言えば、軟白されたアスパラガスが成長する地下の闇を夢想するこの詩人は、極上の美食家だと言っていい。
余談になるが、同誌の「すてむらんだむ」欄42頁で、この詩人は海外のパック旅行の欠点は「食事が良くない」と言っている。また、この夏の軽井沢への旅のハイライトは、自転車で中軽街から旧三笠ホテルまで疾走した冷涼感と「うま味」だったと言う。
この詩人の魅力は、視覚的な知性と生理的な味覚の統合、換言すれば、地上世界と地下都市の隠微な和合にあるだろう。
第三連では地中の闇の中のアスパラガスを凝視する詩人は、ついにすべての感覚が崩れ落ちて恍惚の方へ限りなく近づいていくようではないか。最終連の第四連すべてを引用しておこう。
都市はさいげんもない高みへ限界もない地中
へ取り憑かれ爬虫類の触角を味わいつづける。
地の底にさんざめく楽園それとも繁華街でた
った一晩かけて酔いつぶれていく都市をただ
みているだけの、わたしの犯意はなんだろう
か。
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