男は世間に出て働いて生活費を稼ぎ、女は主婦として家庭を守る、夫婦と子育ての基本はかくあるべきだ、そういう考え方を持っている人が、日本人には比較的多いんじゃないかと思います。
ところで、今、僕はアンデルセン全集第三巻(高橋健二訳、小学館)を読み終えましたが、そういう男女観や家族観を持っている人にはぜひこの本の中の作品「役にたたなかった女」と、巻末の解説434から435頁を読んでいただきたい。早く父親と死別したアンデルセンは、母がせんたく女になって生活費を稼いで育てられた経験から、そして寒い朝でも川でせんたくをしていて、生活苦と労働苦を癒すため彼の母はアルコール中毒になって死んでいくのですが、少年時代のこんな悲痛な生活を見事に言葉として結晶しています。
こういう作品を読むと、あなたも言葉ってとてもステキだ、そう感じるばかりではなく、人間に対するあなた自身の固定観念もきっと訂正するのでは。
あたりまえのことですが、美は絶対的なものではなく、相対的なものです。つまり、例えば、日本の美だけが絶対ではありません。言うまでもなく、さまざまな土地、そこに住むさまざまな人の思いの中でさまざまな美しい事柄や悲しい事柄が成長し、やがて果実となり音や言葉になります。そこには無数の人がいて、無数の美があります。
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