倉田めばの「薬物依存からの回復」

大阪ダルクは1993年に設立されている。薬物依存者は刑務所や精神病院に入所・入院している時は依存している薬物を身体から解毒することが出来るが、そこを出て、社会生活に復帰すると、また薬物依存者になってしまうケースが多い。そこで、ダルクは依存しないで生活できるように支援活動をしている。通所施設が一つ、男性の入所施設が二つ、女性の入所施設が一つある。2006年、大阪ダルクはNPO法人となった。

 「薬物依存からの回復」(倉田めば著、2008年6月2日、発行Freedom)

 著者自身、14歳の頃から薬物に依存し始め、30歳に至るまで精神病院の入退院を繰り返し、それにもかかわらず薬物依存から回復している。おそらく大阪ダルクのような組織を設立して薬物依存者の自立を支援するためには、支援者自身がかつて薬物依存に苦しみそこから回復した経験がなければ、ほんとうの支援者にはなれないのかもしれない。

 著者は、この著書の中で、自分の薬物依存・リストカットあるいは性同一性障害を語り、さまざまな人々との共感をとおして、薬物依存から回復する。わたしは何度も読み返してみたが、いつのまにか人間の死と再生の物語を静かに傾聴している気持がした。

「依存症の人にとって大事なのは、薬物依存という病気を治療するということより、魂の救済だと。魂が傷ついている人が依存症になっているんだから、魂の救われることがないと、薬物をやめつづけることは難しいと思います。」(33~34頁)

 この著書は、2007年2月24日のおしゃべり会での著者の話をまとめたものである。魂の救済の書といって、決して過言ではないと思う。

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