山中従子が「架空二重奏」という詩誌を発行している。山中の個人誌で、毎号、詩・写真・散文で構成されている。
創刊号 2016年1月10日発行
2号 2016年5月17日発行
3号 2016年9月15日発行
4号 2017年1月31日発行
5号 2017年6月12日発行
どうして「架空二重奏」なのかといえば、「わたし」と、わたしの中に住みついているもうひとりの「わたし」とが二人で演じる夢幻劇だ、とも言えよう。あるいはまた、山中の日常茶飯事の出来事を言語化した散文と夢幻劇風の詩的言語の両極、この両極の言語によって山中自身の全体を表現せんと構成された詩誌として、「架空二重奏」だと言っていいのかも知れない。
山中の詩は、破天荒な夢を言語化したシュルレアリズム系の作品が多いが、その中で、詩になじみの薄い方でも比較的わかりやすい作品を「架空二重奏」4号から引用してみよう。
無題
むこうから
いつもわたしを見守っている
草や木たち
わたしは
ドアを開け
彼らに そっと触れる
内側から
小さく跳ね返ってくる
音波
夜
わたしは
自分という影を脱ぎ
深い洞窟のような地球の影の中で
彼らといっしょに
眠っていた
すなわち、実在は影であり、その影を脱ぎ捨てた時、草や木のほんとうの姿と「わたし」は共生できるのであろうか。山中には、さらなる正確無比な夢の言語化をめざして精進されることを期待する。
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