ルカーチの「歴史と階級意識」

 ボクは共産主義者でもなく、また、現在、革命運動を実践しているわけでもない。だからこの著作をわかった顔をして批評するつもりはまったくない。その上、批評するにしても、ボクのような浅学の徒には意味不明の文章が多く、特に政治上の党派闘争の問題や、その当時の、つまり第一次世界大戦前後のソビエトやドイツの共産党の組織論に至っては、ほとんど理解不能である。

 ルカーチ著作集第九巻「歴史と階級意識」 城塚登・古田光訳 白水社 1968年12月20日初版

 ただ、この本のわかりにくさは、ボクの浅学のせいばかりではない。一例をあげれば、マルクスが明確にした労働の二重性、所謂「抽象的人間労働」と「具体的有用労働」は人間労働の普遍性を表現したものであり、資本主義社会は本来商品ではないこの人間労働の労働力を商品化することによって成立したものである。ところが、ルカーチは「抽象的人間労働」を資本主義社会特有の抽象的な物象化された「疎外された労働」だと主張している。……だが、そんなことはもうボクにはどうでもよかった。

 いまから五十年くらい昔の話である。ボクのような「団塊の世代」がまだ二十歳前後の頃に盛んだったニューレフト(新左翼)の運動では、このルカーチの「歴史と階級意識」は必読書だった。懐かしい本をふたたび手にした。この世を去るまでに、そして眼がまだ読書に耐える間に、もう一度読んでおこうと思った本の中の一冊である。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る