おそらく午前四時半頃だろう、十月に入って、朝刊を取りにいくため、玄関を出て門扉の郵便受けまでのあいだ、まだ夜明け前の上天にオリオンが輝いている。
もう六十年余り昔の話だが、戦後まもなく荒地に建てられたバラックに近い我が家には風呂がなく、寒い日がやって来れば、池のほとりから国道沿いの銭湯への長い夜道を、母と兄と三人で襟巻きをあごの上まで巻いて、「雪の降る町を」を口ずさみながら、暗い空に輝くオリオンを見上げて、歩いた。
光あれば
光を愛し
闇あれば
闇を愛す
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