断崖だった。……
未明、いちめん、寝起きの頭のようにぼさぼさした荒地を歩き続けていた。あちらこちら、まばらな枯れすすきが、風もない無音の状態で、ふにゃふにゃ、ふにゅふにょ、巨大な糸みみずになって蠢いていた。
眼下は垂直の闇だった。どれ程の時間がたったのか皆目わからなかった。いつの間にか、断崖に出ていたのだった。背後を振り返ったが、既に荒地は消滅していた。足もとの前後左右、すべてが垂直の闇に囲まれていた。ボクは直径一メートルくらいの円筒形の断崖の頂上に立っていたのだ。
あわてて、助けを求めようとして、スマホのテレフォンマークにタッチした。が、同時に、断崖も抹消してしまった。スマホを耳に押し当てて、直立したまま、ボクは闇の底の方へ墜落していた。……無限の時が過ぎた……気が付くと、ボクはベッドの上にあおむけに落ちていた。
……こんな悪夢を見た朝……
きょうも
きのうのように
ダイニングの東窓の飾り棚に置かれた
えっちゃんとジャックの骨壷の両側を彩っている
花瓶の水替えをした
花の茎を洗っていると
心が明るくなっていた
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