私は金高義朗とよく飲み歩いたりした記憶があるが、最初にどこで出会ったのか、闇に沈んでいる。ただ、この詩誌にこう書いてあるのを三十年の歳月を経て、あらためて読んだ。
「九一年の初春、とある例会で、彗星の如く顕れた山下徹という詩人との邂逅は、かつて私が経験したことのない一つの巨大な啓示を与えた。」(本誌37頁)
こんなふうに彼は書いているのだが、この「とある詩の例会」よりも、この例会の後、彼とカウンターに座って酒を飲んでいるふたりの姿、そんな映像が私の眼底に立っていた。
「KAIGA」45号 編集人 金高義朗/発行人 原口健次/発行所 グループ絵画 1991年9月30日発行
この「KAIGA」45号は、ほとんどの頁を私の特集「山下徹―魔術を弄する神」で編集されている。この特集の他、原口健次、下沢白虹、金高義朗、平川恒、福辻淳、関口芳男、理久創司、勝賀強、以上八名の作品が収録されている。また、従来通り、金高義朗の受贈詩集・詩誌の「批評」、「作品合評」が掲載されている。編集人金高義朗の強い筆力が刻まれた一冊だった。
この一冊の中で、金高はこんな詩を書いていた。
石ノ降ル夜
風ノ重サヲ
歳月デ量ッハナラナイ タトエバ
君ハ 齢ノ指ヲ折ルコトデ
肩ニ積モル砂ヲ祓ッテシマッタ
重サ故ニ加速ヲツケテ
無数ノ石ヲ降ラセル夜
君ハ 過ギ去ッタ
砂ニ埋モレル
光ル砂ヨ
アフレルホドニ盛リ
体ハ 幾千年ノ石ヲ輝カセテイルコトヲ
君ハ知ラナイ(本誌10~11頁)
この詩をめぐって、「作品合評」ではこんな討論が交わされている。
勝賀 表現に深みがある。
原口 言葉に格調がある。
山下 原題は『砂の夜』だったけど、『石ノ降ル夜』にした方がいいと思って、ただカタカナにした方がいいかどうかは、ちょっと難しい。
平川 カタカナを使った方が硬質な感じはするからね。
山下 最後の二行やね、問題は。(本誌58頁)
金高は、本誌の「特集」の中で、私の作品試論を書いてくれた。題して「首への陰翳の固執、或は断念」。例えば、著名な詩人ヴィヨンやランボーを想起すれば誰でもわかるだろう。彼は、本来の詩人の姿、この世から徹底して落ちこぼれた人だった。
*表紙絵は、金高義朗作「自画像」
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