午前一時三十四分

 階段を下りると、薄暗いタイル張りの地下街に出た。太い円柱が林立して天井を支えている。

 私は円柱の林の奥へ足を入れた。

 午前一時三十四分……

 枕もとの近くに置いているスマホで時間を確認した。円柱の奥に入った私の足は、この世ではまだ経験していない何物かを、確かに経験したはずだった。

 やはり、いつもやっているように、覚醒時に即刻その経験を記述しなければならなかった。残念ではあるが、私はふたたびベッドに横たわって、目を閉じてしまった、明け方の五時過ぎまで。

 未知なるあの経験は、消滅した。

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