榎本三知子さんから詩誌が送られてきた。彼女とはずいぶん昔、「土星群」という同人誌でご一緒した。私にとって詩作を通じて出会った懐かしい人の一人だった。
詩誌「鳥」76号 編集者 佐倉義信/なす・こういち/元原孝司 2019年7月1日発行
この詩誌は、十名の作家による十二篇の詩、旅行記、「万葉集」鑑賞、エッセイ二篇、以上の作品で構成されていた。
詩作品に関して言えば、実人生を土台にしてそのひとコマを自らの想像力によって言語化する、そういった傾向の作品が主流だった。
このたび私が注目したのは、こういった詩誌では珍しいエッセイ二篇だった。
まず、内部恵子の「赤ちゃんと美術館に?」。このエッセイは赤ちゃんの美術鑑賞を積極的に評価するものだった。美術館の作品を母子共に鑑賞することによって、特に生後間もない赤ちゃんの色彩感覚を育てること、母親と赤ちゃんの共時的なぬくもりによって母子共に深い愛情に触れあうこと、こうした体験の積み重ねによって生命を肯定して生きる命が育まれるのであろう。生後間もない赤ちゃんを抱えているご両親は一読の価値あり、私はそう思った。
次に、鬼頭陞明の「軍国少年戦後の飢餓地獄(二)」。昭和二十年、二十一年の日本の食糧事情を資料と自らの体験をもとにして論じられた戦後日本論だった。貴重な考察だと言っていい。
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