詩誌「鳥」第81号を読んだ。

 榎本三知子さんから送られてきた詩誌を読んだ。

 詩誌「鳥」第81号 編集者 佐倉義信/なす・こういち/元原孝司 2021年11月1日発行

 全体的に、積み重ねられた歳月を言外ににじませる作品が多いと思った。特に、木下いつ子の「再会」、榎本三知子の「じんせい」には、遠い過去と現在との落差の間から哀愁が流れだしていた。演歌のようなどちらかというと暗い情念ではなく、綺麗な哀愁だった。

 また、奥付にはこう書いてあった。

「去る五月二四日岩田福次郎氏が旅立ちました。京都を愛し、雅語を駆使した貴重な同人を失いました。」

 私は榎本三知子さんとの縁で詩誌「鳥」を第76号からずっと読み続けている。その中で岩田氏は、「アンドロメダの渦」(76号)、「褒美」(78号)、「一つの言葉」(79号)、以上三篇の詩を発表している。79号は2020年10月31日に発行されているので、この詩が「鳥」における彼の遺作だろう。

 三篇だけで論じるのははなはだ無作法ではあるが、狭い範囲の中での印象として、まず独特の表記方法だった。詩は頁の上段と下段に書かれ、中間は大きな空白になっている。すべて長編詩だった。また、敬虔なカトリックの信仰を根底にして、京都の町を舞台に、どこかレクイエムを聴いている作風だった。根本から見れば、特異な終末論的な宗教詩だ、そう言っていいだろう。岩田氏は、マタイ受難曲を背景にして、聖母マリアに抱かれ、きっと昇天したに違いない、私はそう思った。

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