通夜

誰が言うともなく

アア 貧しいからだ

貧しいから人並みの葬式さえやってやれないのだ

蜜柑箱を囲んだ

五六人の車座から

シンミリつぶやく声が漏れている

その額縁は

まだ子供たちが生まれていなかった頃

妻と北陸地方へ旅行した折

二人の記念写真を入れようと買ったまま

押入れの底に忘れられたのである

そんな来歴のある額縁の中に

今は色褪せた<私自身>の写真が飾られて

千代紙を張って綺麗になった

蜜柑箱の上に置かれていた

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