「千葉県詩集」第55集を読む。

 藤井章子さんからこんな詩集が送られてきた。

 「千葉県詩集」第55集 発行人 秋元炯/発行所 千葉県詩人クラブ 2022年11月6日発行

 この詩集は109人の参加者がそれぞれ二頁を割り当てられて、そこに詩作品を発表する企画だった。ほとんどの人は二頁のスペースに一篇の詩を発表しているが、中には二篇の短詩を発表する方もいた。

 まずこの詩を送ってくれた藤井章子の詩を見てみよう。彼女は、「ゆれる月の夜」という作品を書いている。この作品は言葉だけで成立する世界なので、基本的には、いかに精緻な言葉を作品という画面全体にはめこみ磨きあげていくかが勝負の分かれ目だろう。この作品はその勝負に勝った、私はそう思う。

 すべての作品を読んでみて、発行人が編集後記にも指摘している通り、「高齢化が随分進んでいる」(本書229頁)のだろう。多くの作品がその題材や趣向、語り口に歳月の厚みを感じさせた。裏側から見れば、諸行無常とでも言えばいいのか。

 さまざまな作品を読んで、充実した時間を過ごすことが出来た。詩は、やはり人それぞれの好みがあると思う。また、それでいいのではないか、短い人生、自由奔放に好きな詩だけ読んでいればいいんじゃないか、そんな風に思うときも、私にはある。例えばこの詩集で言えば、池田久雄の作品<「雑」学の達人>の笑い、上手宰の作品「静かに困る」の夢に侵略されそうな日常、岬多可子の作品「黒葡萄の間」のアヤシク腐敗したくろむらさき色。あるいは、詩のテクニシャンと言っていい作品。例えば、神尾加代子の「帰郷」、高橋馨の「戦禍を遠く離れて」。

 また、私個人にとってとても切実な作品もあった。高橋昌規の「絶望」、山本明美の「片割れ」。仏教でいう「愛別離苦」を主題にした作品だが、私も愛しあったワイフを八年前に亡くした。この二作品などは、心から愛しあった人との別離を実際に体験した人には痛切に胸を打つだろう。

 藤井さん、ありがとう。

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