透明になった

この狭苦しい二間のあぱあとには

一日中陽が当たらない……

なんて小説的なことは言わない

だって朝の一時間位は

六畳の間の四分の三近くまでまるで水辺になって

光の水しぶきがずんずん打ち寄せて来る

十月の朝日

おとうさんも

おかあさんも子供たちも

部屋いっぱい敷かれた寝床の海で

ヨイショと水母のように伸びをして

透明になった

*一九八〇年十月七日。日記帳から。私は三十一歳。

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