私は若干詩を書いているが、ほとんどその関係の付き合いはなく、特定のグループにも所属せず、ただひとりっきりで書いている。縁あって最近、倉橋健一の指導する文章の会に顔を出すようになった。この十月に彼と会ったとき、二冊の本を手渡された。この本を読んでちょっとおまえも勉強しろ、そういうことだと思った。
季刊「イリプス Ⅲyd04」 編集/イリプス編集部、編集人/松尾省三 2023年7月10日発行
現代詩を中核にした本格的な総合文芸誌だった。不勉強な私は関西にもこんな雑誌があることさえ知らなかった。
読み進んでいるうちに驚いたことがひとつあった。まったく個人的な事柄になってしまい、また、多少長くなってしまうがお付き合い願いたい。
さて、私は「芦屋芸術」という個人誌を出していて、その十号(2020年7月19日発行)で、「死の遍歴、死を書くこと」という作品を発表した。原爆文学やアウシュヴィッツの文学関連の本の書評を集成した文章だが、この中に後藤みな子の「樹滴」(深夜叢書社2012年7月15日発行)の読書感想文が入っている。この私の感想文はグーグルで「芦屋芸術」のブログかあるいは「後藤みな子の樹滴」と打ち込んで検索すれば出て来るので、時間が許せば読んでいただきたい。余談になるが、彼女は一九七一年に書いた作品「刻を曳く」他二篇に一九八三年「ほるぷ出版」から出版された「日本の原爆文学」への掲載を依頼されたが、断っている。その理由は、「自分の鎮魂として書いた。もうしばらく沈めておきたい」(ウィキペディア参照)。ここでは煩を避けてこれ以上「樹滴」には触れないが、「イリプス」を読んでいて、こんな作品に出会った。
後藤みな子「昼の月」(連作二) 本書(イリプス)88~95頁
この小説を一読、ああ「樹滴」の著者じゃないか、何故この「イリプス」という雑誌に彼女は作品を発表しているのだろう、私はこんなことにこだわりを持ってしまった。本棚から後藤みな子の「樹滴」を探して、手にした。その「あとがき」にこうあった。
『樹滴』を本にするにあたっては、倉橋健一先生が労をいとわず「深夜叢書」の齋藤愼爾さんにご縁を繋いでくださった。ありがたいことでした。(「樹滴」285頁)
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