「千葉県詩集 第56集」を読む。

 宮武孝吉さんからこんな本が送られてきた。

 「千葉県詩集 第56集」 発行人/秋元炯、発行所/千葉県詩人クラブ 2023年11月5日

 102名の方が2頁に1篇の詩を発表している。中には、2篇の詩を発表している方もいて、この詩集は103篇の詩で構成されている。

 すべて読ませていただいた。全体的には実人生の一小景を言葉で切り取った作品が多い。言うまでもなく、すべての人はそれぞれ独自な一回の時間・空間の中に生かされて生きている。102名の作家が集まって、それぞれの時空を表現している、極めて多層的な言語世界を味わうことが出来た。

 例えば、神尾加代子の「銀いろのさかな」(本書60頁)のように抽象性の濃い具象的言語世界を結晶させている作品もある。岬多可子の「苑(抄)」(本書172頁)はさらに濃い抽象の姿を見せている。

 また、実人生を描いた作品の中から一例をあげれば、春林秀夫の「見えない世界」(本書146頁)は、私たちが存在するこの宇宙の摂理を説きながら、最終五行に至って我が身につまされる事柄をこのように語る。

 縁ある人は離婚してもすぐに結婚できるが

 縁のないわが三人いる子供らは

 一回も結婚できずに中年になる

 一人暮らしのまま老いて死を迎える不安

 何事も天命、と結論を出す(本書147頁)

 こんな詩もあった。宮崎聰の「記憶」(本書176頁)。語る言葉もないが、虚構ではなく事実ならば、勝手な願いだが、もう少し語っていただきたい、私は強くそう思った。

 ところで、この本を宮武さんから送っていただいたいきさつに触れておきたい。私はこの本に詩「そうなんです。海が」(本書154頁)を発表している藤井章子さんから一年前に発行された「千葉県詩集 第55集」を送ってもらい、その書評を芦屋芸術のブログに書いた。そのブログを読んで宮武さんから礼状に添えて彼の著書「内場幻想」(大空社、2019年7月8日発行)が届いた。私はその詩集を読んで、その感想文を芦屋芸術のブログに書くとともに芦屋芸術の本を彼にお送りした、こうして彼との交友が始まったところである。一面識もない。ただ、千葉県詩集が縁になった出会いだった。ちょっとステキだ、そう思わないか、私はそう思っている。

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