スープが出て来た。濁った赤。
人参だろうか。それともトマト?
だだっ広いレストランに彼ひとりだった。
従業員の姿が見えない。
ならば、このスープは誰が運んだのだろう。
こんな初歩的な疑問が頭をかすめた。
まあ、いいじゃないか。
背後から声がした。
ダメだ、ジットしていろ。
けれど、
がまんがならず、
つい振り返ってしまった。
ここはレストランではなかった。
一瞬、彼の腹の底からものすごい悲鳴が出た。
喉にかぶりつかれた。
椅子に座ったままテーブルの上にひっくり返った。
赤いスープが飛び散った。
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