声が聞こえた。
オメガちゃん、ここよ、ここにいるよ。
午前三時三十八分。
小さな沼に群生する冬枯れたヨシの間から、アルファさんの顔がのぞいていた。この沼にアルファさんは住んでいるのだろうか。こんなところで暮らしているのか。
ふと我が家の二階に亡妻の部屋が九年前からずっと空いているのを思い出した。アルファさん、あの部屋、まだ、空いてるよ。
あ、そうだ。ここはいつも散歩のときによく通る近所の公園の片隅に似ている。ビオトーブと書かれた看板が立っているあの小さな池に。もうボクはわけがわからなかった。
オメガちゃん、わたし、いろんなところに住んでいるの。そんな声がした。
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