こんな詩集を読んだ。
「詩集 もっと 光を」 有馬敲著 澪標 2021年6月10日発行
よみやすく、わかりやすい詩集だった。著者の八十代半ばから九十歳になった直後の心象風景を描いたものだった。
四部に分かれていた。まず「Ⅰ」は七篇の詩で構成されていて、京都の高野川の辺りの散策風景を中心にして渋谷を訪れた時、あるいは激しい歯痛、蚊が群れるような眼の混濁状態を描いたりしている。
次に「Ⅱ」は八篇の詩で構成されている。ここでは肉体の衰えを描いている。持病の不整脈から始まり、バイクの交通事故、腰痛、あふれでる鼻血。その折々の心の動きを語りながら。
「Ⅲ」は五篇の詩で旅行記をメインテーマにしている。例えば若い時、新婚旅行に妻と訪れた白浜にもう一度晩年になって二人で歩いた時の、心と体の落差を描いたりしている。
最後の「Ⅳ」は六篇の詩。著者の晩年の人生観を言葉に写している。平明な語り口だった。この詩集の最終行、九十歳になった著者の詩の最後の三行を引用して、この拙文の筆を擱く。
高野川のほとりでくつろぎながら
五月のさわやかな青をながめて
わずかばかりの希望を探す(本書86頁)
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