芦屋芸術は 、たがいに共感できる世界を言葉で表現することを、めざしています。

（博士が語る）

　これはこれは。昨夜は眠れましたか。えッ？　眠れない？　そいつはいけませんなあ。一日十時間、いや、それ以上に充分睡眠をとらなきゃあ。脳ミソがパサパサになって、粉末状に、つまり黄な粉になって荒れ狂いますよ。

　やっかいなことになりましたなあ。どれどれ。左手を見せてごらん。手の平を上にして。ふむ。これが君の生命線だね。短いね。手相辞典では余命三年になってる。五年生存率２５％。怖いだろ。でも、まだ、いい方だよ。君。君の症状から判断すれば。よかった、助かった、そう思わなくっちゃあ。あした死ぬわけじゃあない。物事はいい方に考えなくっちゃあ。そうだろ。

　それはともかく、とりあえず治療法としては、これだけは言っておく。遵守し給え。いいかい。毎日、トマト、ニンジン、ブロッコリー、タマネギ、ワカメを食べなさい。ニンジン、ブロッコリー、タマネギは温野菜にして。ニンジンとブロッコリーは沸騰して五秒で終わり。タマネギはスライスして熱湯をザッとかけるだけ。まだある。それからこれだ。必ず野菜にエゴマ油、ココナッツオイルをそれぞれ小さじ1杯ずつかけて食べるのだよ。免疫力を強化して脳の粉末化と戦うんだ。脳まで黄な粉にして耳くそや鼻くそ、涎、小便、大便のように外部へ垂れ流してはいけない。だって君の体はもぬけの殻になっちゃう。もうわかったね。そうだよ。合言葉は、君の命を大切に！　いいかね、君、肝に銘じて、命は大切！　これが五十年の歳月をかけて結論した小生の研究成果だ。もう一度言う、君の耳にタコができるまで、何度も言う、命は大切！

（患者が答える）

　先生、ワタシの命より大切なものがあるんじゃないでしょうか。ハイ。それはワタシの脳を粉末化しないもの、命を守るもの、免疫力を強化してくれるものたち、トマト、ニンジン、ブロッコリー、タマネギ、ワカメ……ああそれに、確か、エエーッと、エゴマ油とココナッツオイルでしたね。ハイ。左様です。ワタシのような異常者にとりましては、命より、それを守ってくれるエゴマ油の方が大切です。それに彼等も同じ命で出来てます。だから。ハイ。もう一度言いますよ。ハイハイ。何度も言いますね。ワタシの命よりタマネギが大切！