詩誌「交野が原」第95号を読む。

 金堀則夫さんからこんな詩誌が送られてきた。

 詩誌「交野が原」第95号 編集・発行人 金堀則夫 2023年9月1日発行

 この詩誌は二十九人の作家の詩作品と三人の作家の評論エッセイ、そして十三冊の詩集の書評が掲載されている。すべて読ませていただいた。なかなか読みごたえがある詩誌だった。

 例えば、杉本真維子の詩作品「キセル」(本書6~7頁)の愛の不条理を特異な設定で描いた言語空間を、同じ作者の詩集「皆神山」を論じた佐川亜紀の書評「詩でしか表せられない本質」(本書74~75頁)と照応させていただきたい。きっとこの世の不条理の世界を垣間見る思いがするに違いない。

 不条理といえば、たかとう匡子の詩作品「月光をめぐる粗描(デッサン)」(42~43頁)では書く行為そのものの不条理性が未明の闇の中に浮かんでいる。

 また、中本道代の詩作品「酒乱一族」(本書48~49頁)では生きている時間の哀愁を「大川」と呼ばれる本当は小さな川に流してしめやかに語ってくれる。あるいは、野崎有似の詩作品「もののけと骸骨」(50~51頁)はとぼけた演劇会に似た舞台ではあるが、なぜか背景に人間の切ない悲哀が隠されているのを感じるのは、私一人だろうか。一色真理の詩作品「接吻」(本書62~63頁)は奇妙な愛の世界を一点のスキもなくも見事な物語に託して書き尽くしている。

 柴田三吉の三尾和子詩集「時間の岸辺」を論じた書評「神話的風土とフォークロア」(本書96~97頁)では、悲劇といっていい過去でさえ幻想化して物語る作品群が紹介されている。私は胸が打たれた。

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