七月のアーモンド

 終日雨の予報だったが、幸い、曇り空から雨は落ちてこなかった。

 お昼ごろ、散歩に出た。きょうはちょっと寄ってみたいところがあった。総合公園の西南端あたりにあるアーモンドのささやかな小径。左右五本ずつ並んでいるだけの。

 亡妻とジャックと三人でよく歩いた径だった。早ければ三月中旬、遅くとも下旬には花は満開だった。初めて三人でこの径を歩いた時、

「とんちゃん、もう桜が咲いてる!」

 こんなに早く桜が咲くわけがない。間違ってるのに気づいて、

「これ、アーモンドの花よ」

 もう二十年前の話だった。なぜか七月に入って、もう一度あのアーモンドの木がみたい、そんな気持ちがしたのだった。

 七月

 あなたから

 すべての名前がはがれ落ちていた

 それは

 ひとつのからだそのものだった

 わたしは愛した

 特別な

 ただひとつの

 七月のからだを



*写真は、きょうお昼ごろのアーモンドの小径。鮮やかな緑だった。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る