泥酔と恋心

 カウンターに座って彼はしばらく眠っていたのかもしれない。……

 ……女が横たわっている、彼のベッドの上で。

 酔っぱらっているのか、家を間違って、こんなところで。

 そういえば

 十年前に亡くなった妻は

 一滴も飲まなかった。

 何故酔っ払った女が、俺のベッドの上で。

 好みが変わったのか。

 酔っぱらいの女が好きになったのか。……

 熟睡している間に、こんな自問自答をしていたのではなかったか。

 余程疲れていたのだろう。首がこっくり落ちた。

 まばたきをぱちくりして カウンターを滑り出した。

 首は帰宅する

 店のドアから 自宅の門前まで そしてあの女の方へ

 まだ疲れているのだろう。

 胴体だけが座っている。

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