あの人が去ってゆく夏

 午後一時前、家を後にした。真夏日の芦屋浜にはほとんど人気はなかった。

 東岸の堤防の階段に座って若い男が上半身裸で日光浴をしている。顔も体も日焼けして焦げ茶色になっている。西端の浜辺の水際を黒いTシャツを着た若者が歩いている。そしてグレーのサファリハットを被って防潮堤のコンクリートの道を西に向かって歩いている私。だだっぴろい空間に三人。

 私の頭には朝からずっと命日という言葉が浮かんでいた。おそらく波がないのだろう、頭の中心部で命日はじっと沈黙したまま動かず、時折かすかに揺らいでいる。十年目の命日。

 誰もいない総合公園を通り抜けて、きょうもまた花壇へ出た。炎天下、私は花を見つめていた。確かに狂っているのだろう、何故か言葉があふれて来た。沈黙が破れていくのがわかった。

 七月十九日 未明

 すべてが

 打ち砕かれてしまった

 愛している人が

 目の前で

 この世を去っていく

 こんなにも愛しあったあの人が

 ただ 死を待つばかりの時間だった



*写真は、午後一時過ぎの芦屋浜。写真には人っ子一人見えない、写真を撮っている私以外には。

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