パンを忘れないで

 実はつながっているのよ。未明、あの青い光、見たでしょ。あれ、合図なのよ。あなたの中に入っていく……。あの日からずっと、あなたはあたしと一体。十年前に死んだあたしと。ふたつで、ひとつ。わかる?

 花が咲いていたの。棺の中にいっぱい。そうじゃない。あなた。その花を摘んで、あたしの骨を飾ってくれた。だからねえ、まだつながっていると。しかたないよ。あたしも悲しかった。あなたの花がとてもうれしかった。

 パンを買いすぎて、食べきれない。困ったでしょ。こんなにたくさんのパン。どうしよう。あたし、あなたに、せめてパンだけでも残したかった。食べきれないくらいのパン。

 忘れないで。

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