顔面に釘が刺さっていた。一本ではない。日本だ。違う。二本だ。左右の鼻孔に一本ずつ。痛くはなかった。むしろ痒かった。いや、鼻の穴が痒くて、痒み止めに釘を打ち込んだに違いなかった。
もしそうならば、彼は更に思考するのだった、人類の顔面は決定的な進化を強いられるだろう。すべての人間の鼻孔がこんなにも痒くなれば、とても我慢がならず、二つの穴から釘が生えてくるだろう。それでもまだ痒ければ、人間の顔面から鼻孔は消滅する。百年もすれば、不要になった鼻自体が退化して、その辺りはツルツルしているだろう。
では呼吸はどこからするのか。臭いはどこで嗅ぐのか。空気はどこから体内に出入りするのか。ここだろうか。待てよ。きっとあそこだ! あの穴だ! 彼は人体図鑑をじっと眺めつづけた。
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