アポリネールの「若きドン・ジュアンの冒険」を読む。

 先日読んだ「一万一千本の鞭」に引き続き、同じ作家のこんな小説を読んだ。おそらく大方の日本で詩作している人には、こんないかがわしい作品は書けないだろう、またあまり読みたくもない。少なくとも私はそう思っているのだが。

 「若きドン・ジュアンの冒険」 ギヨーム・アポリネール著 須賀慣訳 富士見ロマン文庫 昭和58年7月20日発行

 アポリネールが一九〇六年、「一万一千本の鞭」と同様、二六歳の時に書きその翌年にG・Aという匿名で秘密出版した作品だった。発禁処分。さて、読後、たいがいの人は単なるエロ小説に過ぎないと思うに違いない。しかし、私はこう思う。失恋ばかりして「愛されない男」アポリネールが、貧困のどん底で金のためにしたためたこの作品、読んでも性的興奮が喚起されるよりも、むしろモテナイ男の火山のように噴き出した妄想が織りなす性愛の青春小説だ、そうではないだろうか。さすがサドやボードレールの血統をひく詩人ならでは、だろう。

 読者よ。この作品を読んで自分の十代を思い返しておくれ。多かれ少なかれ自分をちょっとでも高く売れる立派な社会人になろうとしてお勉強に明け暮れた、今から振り返って思えば、社会常識に翻弄されて余りにも想像力が欠如していたあなたがたの十代を! 

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