
トンちゃんになら あたしの両親のこと
話してもいい
トンちゃんにだけよ
あなたなら 見下げたり 笑ったりしないで
じっと耳を傾けてくれる そうでしょ
だから
話してあげる
父は 若い女が
母は 若い男が
大好きだった
ふたりともよく家を空けて
父は 経営しているお店に雇ったピアニストのお嬢ちゃん まだ大学生
いつでもどこでも連れて歩いてた
母はね
ある日
まだ あたし 高校生よ
下校の途中
街角で
若い男を連れて歩いているのに出会ったの 楽しそうだった
お小遣いあげるって 一万円札出したから
ぐじゃぐじゃに丸めて 母の足もとへ放り投げた
そのまま お家へ走って帰った
あたしね 十代から ニンゲンって こんなもの
そんなお勉強いっぱいしたの 何度も 繰り返して よ
あたし 二匹のワンちゃんを愛してるわ 愛しあって もう十年余りが過ぎた
この世に未練なんてないけど ワンちゃん死ぬまでは あたしは死ねない
それまでは あたし生きていたいの
可愛いよ 今度 一度 見せてあげる
どうぞ わかってください トンちゃん
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