自覚

 やはり思った通りだった。誰もいない舗道を歩いていた。虫はいるだろうか? 一匹でさえいない、絶滅した様子だった。もちろん、言うまでもなく、家一軒、並木もまた見えなかった。山も草も空もない。あるものといえば、一本の舗道の上を、漠然とした気配だけが漂い、あるいは流れているようだった。

 いや、待て。穴があった。ひとつだけだと思っていたのだが、軽々しい判断を下すのはいかがなものだろう。もうそろそろ辻褄合わせは終わりにしたら。いや。違う。既にもう終わっている。見渡す限り、あたりは穴だらけだった。やっと鮮やかな自覚がここまでやって来た。この私自身、穴だった。

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