だったら彼女は生きている……

 昼ではなかった。確か夜だったと思う。あの道を歩いたのは。

 商店街ではなかった。公園でもなかった。海鳴りが聞こえていた。だったら、おそらくあの浜辺に近い道を歩いていたのだろうか。そうじゃないだろうか。いや。そうだと確信をもって断言できるけれど。

 刑事さん。私が憶えている昨夜の出来事はこれで全部。これじゃあ駄目なんですか。これ以上何かお話しできることがあればいいんでしょうが、これ以上はさっぱり思い出せません。

 いったい彼女がどうしたというのです。むしろ刑事さん、どうか教えてください。この十二年間、ずっと彼女を探し続けていたんです。おっしゃる通り、お墓は作っていません。葬式さえしていません。でも、これからの世の中はますます孤独な世界になって、きっと私のように結婚式も葬式もましてお墓なんて作る人なんてどんどん消えていくでしょう。それほど孤独な世界がもうここまでやって来てるんじゃないでしょうか。

 刑事さん、骨壺はいまでも我が家の東窓の飾り棚においてありますが。両サイドに花瓶でいっぱい花を飾って。いつでもどうぞごらんになってください。

刑事 嘘を言っちゃあいかんよ、君!

私 それじゃあ、刑事さん、十二年前に亡くなった彼女はまだどこかで生きてるんですね、たとえば天国で……

刑事 君! しらばくれるな! これを見給え‼

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