
かつて さまざまな人の
唇が開いて
音が流れていた
かつて さまざまな唇から さまざまな音が
流れ 溢れ 漂い
そして すべて 消えた
あれから
七十五年の歳月が過ぎたけれど
この脳には 何も残っていない さまざまな音がしていた記憶以外は
確かに 音がしていた記憶はあるが いずれ
この脳も崩れ
記憶音さえ どこにも 見る影もないだろう ことさら 言うまでもないが
いずれ
この いずれ という言葉が 未明のベッドの上で 繰り返し
ただひとつの この唇から落ちて来る あのさまざまな唇はいずこへ去ったのか
そうだ いずれ だ
残されたさまざまな音という記憶でさえ
崩れて もはや ない この脳の終末が来れば いずれと呟いたこの唇もまた
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