高貴なるもの

 原子力関連施設の一室で彼女と落ち合った。テーブルをはさんで、対面して。

 核の重要性について、それを研究・保管する施設の必要性について、彼女は語り続けていた。……将来、人類の存亡をかけた戦い、絶滅か、それとも人類の最終段階、高貴なる存在者への転換、神なる人、人なる神、宇宙の絶対者へ。

 突然、救急サイレンが高鳴った。高周波電磁映像からテレビ画面、ラジオ、スマホに至るまで緊急事態宣言が何度も繰り返された。それはこのように絶叫していた。途方もない巨大隕石が地球へ激突した、と。

 もちろん、言うまでもなく、この施設にも二十一世紀最大の津波が押し寄せて来た。彼女もまた首筋まで波にのまれていた、くちびるに微笑を残したままで。彼の姿は既になかった。

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