
左耳にくちびるを近づけて何やらしゃべっている。何をしゃべっているのかわからないが、吐息が耳たぶをつつんでいる。時折、くすぐったくなる。だから、こんな場合、吐息がしゃべっている、こう表現すれば真実めいてくるのだろうか。どうだろうか。
耳もとでしゃべっているのに違いないといえるのだが、それにしては、こんな馬鹿げた話があるのだろうか。だんだん、くちびるが見えてくる。彼の眼前にくちびるが浮かんでいる。顔全体はよくわからないが、ぼんやりした映像からわかることは、かろうじて、女性だ、そんな印象を彼は受けるのだった。
吐息とくちびると、そして、いつしか、まつげが浮かんでいた。
「彼」と「彼女」はこうして出会ったのだった。深夜に。
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