いったい どうすればいい?

 その館に何が住んでいるのかわからなかった。いろいろな説があった。三人のゾンビを見た、そう証言するその地区の郵便配達夫までいる、そんな奇妙な噂まで彼は耳にした。それでは、いったいどんなゾンビだろう。

 ニンゲンの死体が蘇った、そう言ったたぐいのゾンビ話ではなかった。信じられないが、それは紫色の巨大なソーセージ状の生物だった。そんな特殊生命体が三本棲息していた。棒立ちになったまま、前後左右に振動しながら移動していたらしい。上部にも顔はなくやはり紫のつるつるしたソーセージ状態ではあるが、時折表面が裂け、パクンパクン上下に引きつり、紅の裂け目の奥から複雑な音階を出した。彼ら特有の言語を発声しているのだろうか。このゾンビ言語を調査研究して、彼の母国語、つまり日本語に翻訳しよう、ひそかにそんな野望を彼は抱いたりした。

 ただ、誤解しないで欲しい。これはあまたある中の一説で、他説も色々あって、いまだ館に何が住んでいるのか特定されていない。そんなバカな。家宅捜索すればいいじゃん。その通りです。ハイハイ。あなたのおっしゃるのは道理ですが。まことに、ごもっともですなんですが。ハイ。確かに正論! ただ、三本のソーセージの上部に空いた紅の裂け目から流れる複雑な音階の演奏をバックミュージックにして、ゴキブリといっしょに指や足や、唇、耳、小腸、鼻、入れ歯、食道やらつぶれた肺臓、大腸など、滝の如く無限に吹き出し続けている、そういった報告まで彼はスマホで受信している。

 館の二階の窓ガラスが圧力で粉砕して、内部から外部へ、庭や街路に向かって、ゴキブリと人体各部がミキサーされた焦げ茶色のうんこが今も噴水している、従って既にこの地区から住人は避難して、現在は無人状態だと、彼はそんな説明を消防署員から受けた。この文章を書き終わるにあたって、大手新聞の記者の取材記事をここに掲げておこう。

 記事ではこう言っている。……原因調査や復旧作業は館の窓から噴き出し続けているこのうんこの洪水が収まってから実行される、もうしばらくの猶予を許してください、説明会場で区長は疲労困憊してやつれ切った面ざしで、そう区民を説得した。

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