だったら おやすみ

 指を見つめていた、親指から小指まで、両手の。さらに、足指まで、両足の。どうしてこんなにたくさん指ってあるのかしら。リカはふとそんな思いにふけってしまった。たそがれ。畳を夕日が染めていた。足を見つめていた目をふともたげると、ベランダの彼方、上部に紅をにじませた濃い灰色の雲が流れた。花柄のカーテンで彼女はガラス窓を閉ざした。

「いやだわ。もう一日が終わるなんて。きょうが去っていくなんて」

「そうだ、ヤミオにラインして、遊んでやろう。きっとあいつも、ひとりぼっち。手持無沙汰でどうしてるのか。楽しい夜が欲しいはずだし」

―ねえ、ヤミちゃん、あなた、夕日、好き?

 あたしと、どっち、好き? 夕日? それともあたし? ねえ。

 どっち。どっち。すぐ返事チョウダイ♥

―だったらリカちゃん、夕日とオレとどっち好き?

 どっち。どっち。

―今夜、ひま?

―会いたい。とっても。

―どこで。どこにする?

―もう一度、芦屋川の堤のあそこ。

―夏は、いや。蚊がいっぱいいるわ

 それよりヤミちゃん、白ワイン、飲みたい。ボトル二本くらい。

 いいワインが入ったのよ。あのお店。

―あのお店、高くてボクにはとても手が出ない。

 リカちゃんは、いつも、二本が三本になるし。

 ごめん。芦屋駅そばの、例の居酒屋にしようよ。

―だったら、いい。

 あんなお店。

 あなたひとりで、飲みな。焼酎でもチビチビやりな。

 もういい⤵

 他の人にラインする。おやすみ。

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