
冨永多津子さんから詩集が送られてきた。一読後、しばらく時が経ってしまった。このたび再読した。こんな詩集だった。
「マッチ箱の舟」 冨永滋著 風詠社 2018年2月9日発行
この著者の詩集は先に「未完の愛の詩集」(風詠社発行)を読んでいて、その読書感想文は既に「芦屋芸術」のブログに投稿しているので参考にしていただきたい。
本書「マッチ箱の舟」の成立のいきさつは詩人の妻冨永多津子が書いた「編集後記」に詳しい。著者は2015年に永眠しているが、この詩集は晩年、六年前後にわたる作品集成だった。
また、著者は私と同じ年、1949年に生まれ、やはり私と同じく十代から作品を書き始めている。そのうえ、私の妻とは一年違いでこの世を去っている。こんな個人的な事柄は関係ないといえばもちろんその通りではあるのだが、しかし私は徹底して個を大切にしてこの世を渡って来たものとして、積極的な論評は今のところ控えておきたい。
戦後日本は言うまでもなく民主主義を標榜して歩き出した社会であり、基本的には物事を多数決で決定する中で個々人は暮らしているのだった。しかしながら、例えば本書のような作品世界を書かざるを得ない著者のごとき存在者は、世間の常識や所謂「この世の知恵」から遠く離れて、自分に与えられた一回的・独自的な内面を生きたのだった。いや、むしろ生きざるを得なかったに違いあるまい。著者にとって、そこに詩が存在したに違いあるまい。
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