永井章子詩集「日々の縫い目に」を読む。

 以前私はこの詩人の詩集「出口という場所へ」(澪標)を読んだ。また、その読書感想文は芦屋芸術のブログに投稿しているので興味のある方は参考にして欲しい。

 さて、このたび手にした詩集はこれだった。

 詩集「日々の縫い目に」 永井章子著 編集工房ノア 2025年7月1日発行

 全体が三部で構成されていて、二十六篇の詩が収録されている。

 詩集の題となっている「日々の縫い目」という言葉、収録された二十六篇の詩篇はこの縫い目から奏でられる変奏曲だった。日常生活という一枚の布に破れ目があって、そこから言葉が噴水するのだった。従って、これらの詩篇は日常への違和感、不安と妄想、しのびこむ不気味な幻影、この事態を一言で表現すればこうだろうか。

 確かなものは

 何もなく

 傍らに

 もう一つの時間が流れていて

 せかせかと

 ずれの間を行き来する

 はぐれてしまって

 すこし歪んで

        *「すこし歪んで」から最終四連を引用(本書35~36頁)

 詩人が短命だった時代はとっくの昔に終わっている。戦前の結核幻想なんてもはや存在しない。どこまでもしぶとく生き抜いて、熟成し他を圧倒する超絶した技巧で構成された作品群を完成すること、極論すれば、この詩集はそうした作品群だと言っていいのかもしれない。

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