
おそらく夢を見ていたのだろうか。だったら、どうして、こんなにも体が濡れているのだろう。頭髪から足の爪先までびっしょり。ぬるりん。肩や腰からいっぱいシズク垂らして。
魚は二十三匹いた。そんなに大きな魚ではなかった。全長五センチ、せいぜい十センチ。Mが差し出した両手のひらの上でひらひら遊んでいた。
ただ不思議なのは、右の方からもう一匹、紫色の魚が泳いできた。この魚は少し大きくて、全長三十センチはあるだろうか。Mの眼前まで泳いでくるのだから、ここは水の中に違いない。果たしてそれが真実なのだろうか。けれどすべてが水中での出来事だとすれば、どうしてMは苦しみもなしに、この場所で笑みさえ浮かべながら、魚たちと戯れることが出来るのだろうか。
両手のひらの上で遊んでいる二十三匹の魚と右方からやって来た紫色のウロコのないぬるぬるした円筒状の魚の間に、ベージュというか肌色というか長辺八十センチくらいの長方形の布製の袋のようなものが赤い口を開けて浮かんでいた。Mの眼前でユラユラ揺らめいている。
この肌色の袋と紫色の魚がささやきあうようにして遊んでいる。時に、魚は袋の中に潜り込んだりして。何度も出たり入ったりして。二十三匹の魚たちは夢中になって両手のひらをかじってみたりつんつん吸いついてみたり。なんという水中劇だろう。これからどんな未来がやって来るのだろう。オレはこのうえもなく幸せだ。こんな貴重な経験のただなかにオレは立っているのだ。Mの足裏から頭頂に向かってよろこびの激情がだわだわ噴き上げていた。
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