
先日この著者の短編集「仮面物語集」を読んで、その読書感想文をブログに投稿した。今回は同じ著者のこんな長編小説を読んだ。
「フォカス氏」 ジャン・ロラン著 篠田知和基訳 月刊ペン社 昭和56年11月10日初版発行
先に読んだ「仮面物語集」もそうだが、この著者の作品を読むにあたって、少なくともアンソールやギュスターブ・モローの絵を見ておいた方が、より深く楽しめるだろう。仮面や骸骨や首から下の胴体のない世界。
確かトマス・ドクィンシーの「阿片吸飲者の告白」をボードレールがフランス語に翻訳していると記憶しているが、ボードレール自身「人口楽園」をものしている。薬物体験の目くるめくような世界を表現した素晴らしい作品だった。
フランスの詩人にはそのような流れがあるのではなかろうか。ロランの「フォカス氏」もこの流れから浮かび出た傑作だろう。ずっと後方には「みじめな奇蹟」など薬物実験体験を線描画と言葉でうずめたステキな作品を何冊も書いたアンリ・ミショーも控えている。
私は十代二十代前半、彼等の作品をむさぼり尽くして興奮した懐かしい思い出を持っている。
従って、こう結論しておこう。詩人としてこの世を渡り歩くのは特別なニンゲンにだけ与えられた宿命であり、私などはとても自分を詩人だなんておこがましくて笑ってしまうばかりか、それ以前に、門前払いを食っている。もし私程度の作品しか書けないのに自分を詩人だと主張している人は、既に終わっている。うぬぼれさんの末期症状。一度真摯に彼等の作品を読んで欲しい。
それはともかく、ロランのこの作品を読むと、こんな舞台が私の頭の中に浮かんできた。すべての肉体が腐乱し、崩れ落ち、目玉だけが虚空に浮遊している、無数の緑色のエメラルド製目玉だけが。果たして、あなたにこんな舞台が想像できるだろうか?
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