オヤスミ

 歳を取ってしまった。

まだ体はどうということはないが、

耳だ。 特に左の耳が聞きづらい。

いつも聴こえたふりをしているが、

ほんとは

相手が何を言っているのか、

意味不明の時が多々ある。

 ……

 スナックで飲んでいる時でも、

ママが何か語りかけてくるが、

ボクは少し唇をゆがめて、微笑んでいる。

さらに悪いことに、頭をタテに振って、

うなずいたりしている。どうしたらいいのだろう。

 …………

 昔から医者嫌いだから、もう何十年も病院に行っていないし、ワクチン何て打った覚えもないし、一切、今まで身体検査もしていない。自分の血液型さえ知らないんだ。父がABで母がAO、そう言っていた。だからボクは何型なんだろう。どっちでもいい話だが。御覧の通り、元気な証拠はたくさん持っている。ただ、耳だけが……

 ……………………

 まあ、いいさ。この世のイヤなことは聞こえない方が、幸せじゃないか。そうだろ? もう三十年来の古い付き合いだ。お前なら、このオレのこの気持ち、きっとわかってくれるはずだ。

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 まだ四時前か。もう一寝入りするね。きょうは仕事だから、金曜日でもう疲れ切っているけど、六時には必ず起きるから。

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 壁君。二回目の、オヤスミ、なさい、だね。いや、もちろんさ、絶対寝坊なんてしないと思うけど、でも、気が付けば、いつものように起こしてね。たがいに、オハヨウ、と声を掛け合って。

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