昨夜、崩壊過程を議論した。

 ゆっくりだったのかもしれない。いや。ちょっと違うだろう。むしろ、それは、いきなり、だった。川で言えば、山奥を流れる、急流だったと言っていい。岩から岩へと自ら悲鳴を上げながら、裂け、ちぎれ去って滝つぼへ墜落していく……今となれば、それが真実だと主張されても、けっして誰も異議を唱えはしないだろう。どうだろう。そうじゃないだろうか。

 そこまで言われなくても、とうからMにはわかっている。確かにすべては崩壊過程をたどっている。

 ニンゲンだけではない。蟻も蝶もゴキブリも。あるいは、明日の夜明けにあがると予想される太陽だって。もうはっきりここで言ってしまおう。ボクラが宇宙だと信じているこの漠然とした全体、このすべてが、崩壊していくのだった。そうなんだ。漠然としているものがみな、崩壊していく、その先には、いかなる滝つぼもなく……

 必然的に崩壊するというならば、理論的に言えば、おそかれはやかれ、あす、すべてが崩壊しているだろう。より正確に言えば、この現在の直後、漠然とした全体は崩壊している。真理の眼から見れば、むろん、数億年は一瞬だろう。たとえそれが数光年であっても。

 だからそこでは、闇だけではない、光も砕け散って、ひとかけらも残っていなかった。残存物は零。Mがあんなにも愛したリカちゃん、あのピンクのくちびるを濡らしていた甘い唾液の一滴のしずくも、そこでは、その一瞬の中では、消えていた。

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