シュオブ短編集「黄金仮面の王」を読む。

 ずいぶん昔の話だが、この作家がイイネ、そう思ったときがあった。奇妙な作家だ、そんな印象が今でも残っている。

 「黄金仮面の王」 マルセル・シュオブ著 大濱甫訳 国書刊行会 1984年8月25日初版第一刷

 最初にこの作家の作品を読んだのは、私の記憶に間違いなければ、西宮図書館で幻想小説の傑作集だったか、その中にこの作家の短編一作が収録されていた。いい作家だ、そういう強い印象を持った。

 今回ご紹介する作品集は、この作家の三冊の短編集から四十三篇の作品が収録されている。まず「黄金仮面の王」(1892年)から十二篇、「二重の心」(1891年)から二十三篇、「小児十字軍」(1896年)は全八篇。

 言うまでもなく、十九世紀フランスの夭折したユダヤ系世紀末作家である。また、この作家の特色を単的に表すことは出来ない。複雑多岐にわたった物語作家だった。「〇八一号列車」などの怪奇や恐怖が漂う作品があるかと思えば、例えば、「サビナの収穫」や「ポデール」のように幻想とも現実ともつかない中から強い哀愁がにじみ出してくる作品まで、果ては「小児十字軍」の八篇の対話作品によって純白な空間が構成されていく。

 未読の方は、せめて、ご近所の図書館に足を運んで、表題になっている、「黄金仮面の王」だけでも一読されたらいかが。もうちょっと後に出てきたユダヤ系作家のカフカが好きなら、きっと、おもしろかった、そんな読後感がするんじゃないか、と。短篇だから、館内で読み終わるかも。

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