芦屋ビーチクラブ その103

 スナックのスタッフには、七時ごろドアを開けていつものカウンター席に座るなり、開口一番、お願いしておいた。あしたの朝、芦屋浜のゴミ拾いをやらなきゃならないので、九時半、遅くとも十時にはタクシーを読んでね、早く帰りたいから。

 かなり強く、スナックのスタッフ、Jちゃんには念を押していたのだが。

 というのも、明日の日曜日、ビーチクラブのリーダー中村さんが休む、母校が高校の春のセンバツの代表になって甲子園に出場するから、そう耳にしていた。だから、絶対いつもより早く浜へ出かけて作業の準備のお手伝いをしよう、その前に洗濯を終わらせて。そう心に決めていた。

 土曜日の夜は、なじみの客が何人もやって来た。つい話がはずんでしまった。左隣に座った五十前後の男性、この店で何度か会っているのだが、こんな深刻な会話が流れていた。彼は自分の左首すじを右手の人差指で指さして、

K ここに腫瘍が出来て、最初、一つだと思っていたのが、もう一つ見つかった。

 …………

K 良性だと思うんだが。ランクが0から5まであって、2、だと医者は言うんだけど。

  五月に手術をやることになった……たいしたもんじゃないと思うんだが……

 そう言って、彼は笑い飛ばしていた。

 どうだろう。なんの利害関係もない人間同士、酒を飲みながら、こんなお話を交わしている。だったら、どうだろう。私は思うのだが、酒で頭の表皮をカバーしている常識や世間体が流れ去り、頭の底にたまっていた赤裸な心があふれ出してくるのじゃないだろうか。だったら、酒を飲むって、ステキなことじゃないだろうか⁉

 それはさておき、あれこれしているうちに、もう一軒ハシゴしてしまい、帰宅したのは、きょう、午前一時半ごろになってしまった。あれだけ決意していたのに。日曜日の朝は、芦屋浜のゴミが、どうぞ拾ってください、そう呼びかけているのに。

 六時ごろ、ベッドから身をもぎ離した。フラッと、立ち上がった。洗濯をして、二階のベランダの物干しに洗濯物をぶら下げた。ヨシ。ヤッタゾ! 八時前に芦屋浜に到着。既に作業の準備は他の仲間で終了していたのだが。

 ボクを今か今かと待っていた浜のゴミを拾い、雑草を抜き始めた。



*写真は、けさ、九時前の芦屋浜。前週同様、スズガモたちが遊んでいる。遠くて見にくいけど、点々になってるけど、目を凝らして、見つめて欲しい。

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