新メニュー 作品料理

 壊れたらどうしよう、確かにそんな不安はあった。

 サツマイモを薄切りにして、その上に作品を書いている。何度もインク瓶にペン先を浸して、何枚もの薄切りを積み重ねながら、それぞれのその上に、作品を書き続けている。こうした制約を自らに課すことによって、書き損じを一切許さない、一回限りの独自な作品に彼は集中するのだった。

 けれど、何だいったい、このサツマイモは。ボイルしているのだろうか? 数十枚の薄切りに書き刻まれた作品が完成する間際、グジャグジャに崩れて、食卓の上でねっとりした三十センチ大の小さな山になってしまった。もちろんのことだが、ここには、一分一厘の作品の面影もなかった。失われた作品、崩れた山に目を落とし、彼は独り言ちた。

 仕方あるまい。ステンレスのボウルの中に崩れた山をかき集めて、多少塩コショウをして、すりこぎで混ぜて、さらに柔らかくして、皿に盛った。インクの味がした。

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