カルペンティエールの「バロック協奏曲」を読む。

 こんな本を読んだ。

 「バロック協奏曲」 アレッホ・カルペンティエール著 鼓直訳 サンリオSF文庫 1979年5月15日発行

 この本には中編「バロック協奏曲」と短篇「選ばれたひとびと」の二篇が収録されている。周知のとおり1960年代からラテン・アメリカ文学が注目されたが、著者はその中核を担っている作家の一人だろう。所謂「マジック・リアリズム」の世界だ。

 「バロック協奏曲」は書名からもおおよそ判断できるが、小説というより、言語で作曲している、そういう印象を読者は受けるだろう。また、過去と現在の時空の錯綜劇、現実と妄想との言語混沌体、そう言っていいのかもしれない。この曲、あるいは歌劇が志向しているのは、一言で言えば、魂の故郷への還帰ではないだろうか。読後、私にはそんな思いが残った。

 短篇「選ばれた人びと」は、やはり時空の錯綜劇で、言うまでもなく旧約聖書創世記にも記述されているが、大洪水で人類が破滅する状況の中で、特に地球上の空間の一定の時と場所でこの世に残される運命を絶対者から告知されたさまざまな民族の少数の選民が出会い、また、それぞれが与えられた場所へ帰っていく、書名に掲げられた「選ばれた人々」の物語だった。惜しむらくは、理屈が多々見られ、例えばこの本の86頁などは、私のような理屈嫌いの知恵の低い人間には興ざめの感がなくもなかった。あくまでも、現実と妄想の世界を言葉でひたすら刻み続けて欲しい、私はそんな思いにとらわれてしまった。もちろん、それはあくまでも、私の好みに過ぎないのかもしれないが。

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