深夜に浮かぶ画像

 一様に黄土色ではあるが、それぞれ、さまざまな濃淡があって、全面、繊維状に組み合わされている。どこまで行っても、それら、黒白に近い濃淡に繊維状に織り上げられた黄土色の画面が続いていた。あらゆる角度から映像され、時折、コメンテーターの解説が流れているが、音が割れ、キイキイ雑音が入り、いったい何を説明しているのか、どんな意見を主張しているのか、わかったようで、さっぱりわからなかった。つまり、それは奇妙なバックグラウンドミュージックに過ぎなかった。

 しかし、それでは何故だろう。先程からずっと、彼はこの画面を固唾を呑んで見守り続けていた。血走った、しばしば涙ぐみさえしているその両眼を慰めなだめようとでもしているのか、まぶたが幕を降ろして画面を鎖していた。おそらくは、彼の両眼と黄土色の繊維状内面世界を分断し隔離するために。

 だったら、これが、この画面全体が、彼という内部の究極の姿だったのかもしれない。もう言うまでもあるまい。両眼と、まぶた、この黒白に近い濃淡に刻まれた黄土色繊維状映写像、この三者だけが存在する世界が。既に見境もなく支離滅裂になったそんなコメンテーターの説明ともつかないバックグラウンドミュージックが、深夜、彼の耳もとで絶叫していた。

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