光成物質

 もうその先は考えないようにしようと思っていた。

 長い間、がんじがらめになっていたことは確かだった。だが、手錠だろうか、縄だろうか、鎖だろうか、それとも拘束衣なのか。いったい何でがんじがらめになっていたのだろうか。もっと精神的なもの、ある固定観念、そんな類のもので脳の中ががんじがらめだった、そうだろうか。そうかもしれない。いつもこの辺りで、考えるのを放棄していた。ここから先の次元は彼の首を彼自身の両手で締めくくり、自死の沼に溺れていくのではあるまいか。どうなんだ、Mの耳もとでそんな叫び声が上がっては、消えた。もうかれこれ数十年、もちろん断続的にではあるが、こんな自問自答がMの脳裏に流れるのだった。オレはがんじがらめだ……

 やはり あなたは ヒカリが好きなんですね ヤミよりも

 何かが光っていた。小さな光だった。決して脳の中にだけ浮かんでいる幻影ではなかった。信じて欲しい。それはダイニングテーブルの中央あたりで光っていた。豆電球大の光り輝く球状物質。直径三十センチくらいの円の範囲内を一定の軌道を描いて移動しているのではなく、自由気ままにあちらこちら動き回っている。だったら、この光は生きているのだろうか。

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