
彼の中で何かが壊れていた。それに気づいた時にはすでに手遅れだった。メモ帳にこんな言葉をイタズラ書きまでして。
消えていく
家に住んでいた小さな虫でさえ
この世から消えていく
なぜって
これ以上この世で生きているのがツラクなったから
十年前のきょう、八月の初め、二〇二五年八月一日金曜日、その日に書いたメモ帳の文章をMは読み返していた。あの夏は猛暑日が一か月以上も続いた、過酷な季節だった。だからオレはこんな暗い気持ちになっていたのだろうか。いや。今となっては理由なんてわからない。けれど、二〇三五年八月一日の現在とは異質なオレがかつてこの同じ家に住んでいたのだ。ただ、とても懐かしい。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。







この記事へのコメントはありません。