
さびれた街だった。人気がなかった。もしかして集団疎開でもしたのだろうか。戦争の噂なんて聞いた覚えもないが。それにしても、目も当てられなかった。すべての風景がほとんど砂に近い状態だった。三日後には崩れ去ってしまうのではないだろうか。辺り一面、街全体、厖大な砂煙をあげながら。
スマホで確認した通り、あれから百年たっているのかもしれなかった。待て。そうじゃない。とんでもない話でとても信じてもらえないけれど、もしかして千年後をさまよっているのではないか。だって、あれを見ろ。土砂製の人体のようなものがあちらこちらに立っている。だったらすべてが砂化してしまったんだ。この街のニンゲンたちは集団移動したのではない。全員、砂化したのだ。
確かここは居酒屋だったと記憶している。土砂製のカウンターやテーブルの周りにおおぜいの人体の砂柱が座っている。そうだ。思い出した。私はMとヤミオとリカと、この居酒屋で待ち合わせていたのだが。彼等はついにやって来なかった。いや、そうじゃあるまい。彼等もまたこの居酒屋のどこかで砂化して千年、座り続けているに違いない。それならば、落ち合う約束をして、もう少なくとも七、八百年は立ってしまったのだろう。
だったらこの「私」っていったい何物なんだろう。もちろんニンゲンではないことだけは確かだ。彼等と落ち合う約束をした時、既に私は七十歳を超えていた。一歩譲って、確実に言えることは、意味不明の「私」という奇妙な存在物が砂化した街をただ一個だけで自問自答しながら移動して、約束の場所、この居酒屋までやっとの思いで到着した。なんとなれば、Mとヤミオとリカに再会するために。先述したが、スマホの情報によれば、三日後に崩壊し壊滅するこの砂の人体が何万体も立っている街へ。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。







この記事へのコメントはありません。