
いったい何人でゴルフをラウンドしているのか、皆目見当もつかなかった。山岳コースだった。山頂伝いにゴルフコースは直進を続けた。左右両サイドは断崖絶壁。狭いフェアウェイに差し掛かったら幅二メートルくらいで両サイドにラフはなく、いきなり絶壁だった。打球をフェアウェイに乗せるのが至難の業。おおぜいのゴルファーたちが何発OBを出したか、その数は計り知れなかった。ボールはあっけなく谷底へと消えた。
従って、プレーの進行は極めて遅く、ゴルファーで渋滞。都心のラッシュアワー時の山手線や地下鉄よりもすさまじい光景だった。そのうえ不可解ではあるが、物音ひとつしない。誰一人おしゃべりしない。口を開かない。黙然として歩き続けている。というのも、このゴルフ場にはゴルフカートがなかった。また、キャディーもいない。すべてのゴルファーはゴルフバッグを肩にかけ、もう何時間経過したのか、足を引きずり、肩で息をして、あえぎながら前進している。もう何番ホールでプレーしているのかさえ、ほとんど意識に上ることさえなかった。
どこまで言ってもクラブハウスは見えなかった。遥か彼方には富士山に似た巨大な山が八合目辺りまで雪に埋もれ、夕焼けに赤く燃えている。スマホで写真を撮っているゴルファーもちらほら。どうやらこのゴルフ場ではすべてのゴルファーに同伴者がなく、ただ一人だけでプレーしているのだった。スコアカードもなく、打数などどうでもよかったに違いない。どこまで行ってもグリーンもなかった。
夕闇が降りてきた。あの富士山に似た巨大な山も今は闇に沈んで見えない。夜空に金箔の大きな文字が浮かんでいた。満天の星が結合して文字になったのだろうか。
みなさん
これから
夜のゴルフ場の競技を
思う存分 楽しんでください
しっ 静かにして ほら 断崖に注意して
どうぞ あした 日が昇るまで 生きて抜いて
ぜひ 元気な姿を見せてください 八合目でお待ちします
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